睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸停止が頻繁におこること、と定義されています。
1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。

軽症  5 ≦ AHI <15
中等症  15 ≦ AHI < 30
重症 30 ≦ AHI

(成人の睡眠時無呼吸症候群 診断と治療のためのガイドライン 2005)
睡眠時無呼吸症候群は概ね2つに分類されます。

1中枢性睡眠時無呼吸症候群
2閉鎖型睡眠時無呼吸症候群 Obstructive Sleep Apnea Syndrome (OSAS)

1は睡眠中、呼吸中枢からの呼吸指令が出なくなり起こる場合をいいます。
2は、空気の通り道である気道が狭いことによって起こります。

Ⅰ狭くなる部位は3か所です。

1鼻腔 
2咽頭(口蓋垂とその周囲の軟口蓋粘膜)
3舌根部

それぞれに原因があり、それに対する治療法があります。

Ⅱ原因

1鼻腔

アレルギー性鼻炎などがあると下鼻甲介が肥大し鼻道(鼻の中の空気の通り道)が狭くなることでおこることが主な原因です。今日では慢性副鼻腔炎(蓄膿症)で鼻ポリープができて鼻が詰まってしまう例は少なくなっています。

2咽頭

口蓋垂(のどちんこ)とその周囲の軟口蓋粘膜が大きく、気道(空気の通り道)のどが狭くなっているのが原因です。扁桃腺が大きい場合も原因となります。

3舌根部

仰向けで寝ると舌の付け根(舌根部)が重力で下におち気道をふさいでしまうことが原因です。一般には成人男性の場合、体重が身長マイナス100の値に5を足した数値以上の場合におこりやすくなります。例えば身長170cmの場合では170-100+5ですから、75Kg以上になるとこのリスクが高まります。

Ⅲ当院での治療

睡眠時無呼吸症候群の治療の第一選択は持続的陽圧呼吸器を使用することですが、当院では、様々な理由で使用できない、あるいは使用したくない場合の治療をおこなっています。それぞれのメリット、デメリットは、【無呼吸】アメリカ耳鼻咽喉科学会が示すエビデンス治療(根拠に基づく治療)にまとめてありますので参照してください。

Ⅱ―1鼻閉 

アレルギー性鼻炎・花粉症、肥厚性鼻炎による鼻閉は、レーザーにて鼻腔内の下鼻甲介を焼灼すると、改善します。

Ⅱ―2咽頭狭窄(口蓋垂が大きい場合)

レーザー咽頭形成術といわれる術式で、口蓋垂とその周囲の粘膜を切除し、咽頭(のど)部の気道を広げます。口蓋扁桃(扁桃腺)が大きい場合は切除する場合もあります。

Ⅱ―3舌根部

ここが、閉鎖するのは、ほとんどの場合肥満が原因ですが、鼻閉・咽頭狭窄を手術で治療すると、アメリカ耳鼻咽喉科学会の学術誌であるLaryngoscopeに最近掲載された論文
Rotenberg BW1, Theriault J, Gottesman S. Redefining the timing of surgery for obstructive sleep apnea in anatomically favorable patients. Laryngoscope. 2014 Apr 16 では、様々な理由でC-PAPの使用が困難であった、閉塞性無呼吸症候群の患者126名、(患者さんの体重はBMI平均30,9(23,2 - 34,8)と多くは肥満の患者さんです。)に対して、咽頭形成術をおこない、術後1年目の経過を報告しています。咽頭形成術で睡眠時無呼吸スコアAHIが半分以下になる改善のみならず、血圧の改善、睡眠クオリティーの改善を認めています
(BMIの参考値たとえば、身長170cm体重86.7KgでBMIは30.0です。)
この論文からは、体重が多くても効果が認められていますが、理想の体重にむけて、個人に合わせたダイエット指導も併せておこなっています。

放っておくと危険な睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群の発症に伴うリスクは、生活習慣病だけではありません。
眠気や集中力の低下による交通事故や労災などにつながる危険性もあります。
睡眠時無呼吸症候群のリスクを正しく理解する事が治療の第一歩です。

睡眠時無呼吸症セルフチェック

睡眠時に無呼吸になっているかどうかは、自分では気づきにくいものです。
家族や他人から指摘されてはじめて知る人も多いと思います。
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある人はセルフチェックで症状を確認してみましょう。

睡眠時無呼吸症候群の原因

そもそも、睡眠時無呼吸症候群はなぜ起こるのでしょうか。
その原因と対策が分かれば、改善が見込めます。
現在、判っているだけでも、かなりの種類がある睡眠時無呼吸症候群の発症要因ですが、その中でも代表的なものをご紹介いたします。